ミニブログ
2024年11月26日
しばらく品薄でしたが、拙著の初版3刷が書店に出回り始めたようです。
2024年4月28日 感想:長井英生著『確率微分方程式』 共立出版,1999年
- Williams(1991)等の離散時間マルチンゲールの知識を前提に、連続時間確率過程を解説する
- 確率微分方程式そのもの(3章)より、生成作用素を介して付随する偏微分方程式(4〜6章)までの記述が厚い
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吉田氏の著書と同じく、定理はなるべく一般化し、証明の行間も狭くするという意図を感じる良書(ただしレベルは専門書)
- 同タイトルの本が複数あるが、確率制御・HJB方程式(5章)、変分不等式(6章)を扱っているのは本書(とエクセンダール)のみ(たぶん) (Oksendalは扱っているトピックが膨大で、通読は難しいと思われる)
- 粘性解(4章)に触れた邦書としても希少 (小池2016がタイトル通り粘性解の入門書だが、「二階偏微分方程式を扱う場合は、確率解析の準備が必要」として割愛されている)
- この分野はJ.L. Lions, P.L. Lionsの業績無しには語れないようだ
2024年4月14日 感想:吉田伸生著『関数解析の基礎』裳華房,2023年
- 数学書としては個人的に最も感銘を受けたものの1つ(もう1つはWilliams 1991(正確にはその邦語訳))
- 通読できる関数解析の邦書の教科書(門外漢にとっては専門書レベル)として最も優れていると思う
- 構成と証明に簡潔さと分かりやすさに対する著者のこだわりと美学を感じる\(^□^)/
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とくに、証明の等号に根拠となる式をつけるなど、いわゆる行間をなるべく狭める工夫が随所に感じられる
- 本書で個人的にとくに必要だった項目は、共役作用素、リースの表現定理、ソボレフ空間・ディリクレ問題、レゾルベント
- (恩恵に与れるのかわかっていないで、)「関数解析三大定理」は見ていない
- 半群の生成作用素、ヒレ–吉田の定理については記述がないが、黒田(1980)や藤田ほか(1991)で補える
2024年2月6日 線形代数
今更ながら(そして当たり前ながら)線形代数の重要性を感じています。
高校で2×2の行列の計算させられたときには、なんのことやらよく分かりまでしたが、大学でも理系ならば最初に勉強させられるだけあって(文科の自分には関係なかったですが)、連立方程式や固有値、射影など(当然のことながら)実用性が高いです。
応用では、1階のテイラー展開で線形になるとか、数値計算は有限次元しか扱えないとか、関数解析の入り口とかが思いつきます。
2023年8月8日 ファイナンスのためのMCMC法によるベイズ分析
三菱経済研究所経済研究書のPDFが公開されていると聞き及んで。私の一押しは上記タイトルです。MCMC法を解説した邦書では最も古い本の一つ(ただし書店で売られていた期間は短い)で、かつ最も詳細かつわかりやすい本の一つです。
2023年7月31日 経営学の危機
経営学の学界の危機を訴える『経営学の危機』を読みました。「経済学」の隣接分野ですし、全く学んだことがないわけではないので、かなり惹かれるタイトルでした。
トップジャーナルの著者たちには理論構築が強く求められていること、ところがその理論には抽象的な言葉を用いたトートロジーに過ぎないものが多いということを指摘する部分が印象に残りました。
ただ、EBMの章(Evidence-Based Management, 8章)あたりから全く頭に入ってこず。門外漢だからか、流し読みのせいなのか、翻訳のせいなのか、はたまた最初から明瞭に書かれていないのか。
2023年5月4日 夜間滞留人口
東京都モニタリング会議資料によると、現在(2023年4月)の繁華街夜間滞留人口(18-24時)は2019年比で50%だそう。感覚的にもそんなものかと思います。不本意な人も多いでしょうが、「新しい生活様式」が定着しつつあるようです。
2022年12月1日 macOS 13 Ventura
うっかりmacOS 13 Venturaにアップデートしたところ、外部ディスプレイを接続するとHiDPIモード変更ができない問題(フォントがぼやける)に遭遇して格闘してたのですが、BetterDisplayというサードパーティソフトでディスプレイの解像度を 元のMontereyでの状態に戻せました。
Some Macs have issues with custom resolutions. Apple Silicon Macs notoriously don’t allow sub-4K resolution displays to have HiDPI (“Retina”) resolutions even though some 1440p display would greatly benefit from having a HiDPI “Retina” mode. On other Macs the resolution options for wide displays are too constrained.
BetterDisplay solves the problem by unlocking your screens making them fully scalable natively while providing a nice HiDPI resolution slider to freely scale the desktop size.
Macではカスタム解像度に問題が起こる場合がある。Apple Silicon Macは、1440pのディスプレイがHiDPIのRetinaモードを持つことで大きな恩恵を受けるにもかかわらず、4K以下の解像度のディスプレイにHiDPI(Retina)解像度を持たせないという悪名高い仕様になっている。他のMacでも、ワイドディスプレイの解像度オプションに多くの制約がつけられている。
BetterDisplayは、デスクトップサイズを自由に変更できるHiDPI解像度スライダーを提供し、画面をネイティブで完全にスケーラブルにする。
2022年8月9日 Juliaで将棋
MT将棋に触発されて、Juliaで将棋ソフトを作ってみたり。AI(思考エンジン)とは別のUI部分を勉強しましたが、やねうら王などのAIを借りてくればGUIソフトが作れそうなところまでは来ました。これくらいにしときますが。画像は王位戦2022第3局終局図(7七金打まで)。
juliaは2年くらい使ってますが、アップデートの頻度が減って完成度が上がっているようです。が、いかんせん慣れてない人だと細かいところが難しくプロ向けです。そして、自分みたいに新しいツールをどんどん使いたい人はどれくらいいるのかといったところ。
2022年8月7日 Webサイト更新
重い腰を上げてWebサイトの15年ぶりくらいに再構築を始めました。データはGitHubに移して、Pagesで公開することにしました。Jekyllというmarkdown記法が使える静的サイト生成ツールもサポートされているので入れました。
html直書き→Google Site→GitHub Pages、wiki→markdownみたいな流れはあるんでしょうね。GitHubも簡単ではない(サイトは割合簡単に作れますが)ので、どれくらい普及するかは見えませんが。そして私なんかはインターネット第1世代といってもいいくらいなので何とかなりますが、若い人(スマホ世代)はついて来れるんでしょうか。
2021年7月9日
ついに国は「飲食店対策」と言いだしました。飲食店は外部不経済、課税すべき(例えばここを参照)とまでは行かずとも、そういう流れでしょう。
あと気になるニュースは
2021年2月11日
逃避変異という言葉があるんですね。事象自体は想定内ですが。
2021年2月5日
拙著の重版の連絡。売れてるようでよかったです。
2021年1月19日 備忘
2020年12月24日
連続時間一般均衡モデルの研究ノートをひっそりと公開。Matlabプログラムあり。 次は連続時間動学的確率的一般均衡モデルについて書きたいが、一筋縄ではいかなそう。
2020年8月13日 Julia
最近新しいことを始めたので、ついでにJuliaに手をだしてみました。Matlabのような簡潔さで、Rのように柔軟に書けるという感想です。Fortran時代に手ごろに行列計算をできるようにしたいというのがMatlabですが、UNIXを手本にLinuxができたように、Matlabを手本に現代的な要素も入れた自由な科学技術計算言語を作ったというのが私の印象です。
ということで、JuliaはMatlabに似た使い方ができますが、高速化のため静的型付けの要素が含まれているので型エラーになりやすい点が異なります。変数のスコープについても若干クセがあるように思います。MatlabやRは動的型付けで型を意識しないので、静的型付け言語を使ったことがないと苦労するかも。もしC言語などを知らなければ、関数型静的型付けのHaskellやOCaml/F#で遊んで苦しんでおいたほうがよいかもしれません。このところJuliaは認知度が高まっていますし良いところが多いので、これからメジャーになるかの分水嶺に来てます。
※Juliaは、動的型付けと静的片付けの併用ということに気づいたので、加筆修正。
Rも使ってる人が増えていますが、RもJuliaと同様、関数型動的型付けという珍しいタイプで、何でもlistの要素にできるので、無茶苦茶書けます。初心者はパッケージの関数が返すlistが何なのかよくわからず困るんですが。RでもJuliaでもこういうプログラムが書けるのは面白いです(下はJulia)。
a = ["x" "y" "z"];
b = [1 20 300];
j=1;
for i in 1:3
@eval $(Symbol(a[j])) = b[j]*10;
j += 1;
end
println((x,y,z))
# (10, 200, 3000)
8月3日 拙著について(2)、WSL2
ΔCt=0は右上がりじゃないかって言われると、確かにそうです。
WSL2はUbuntu 20.04を入れて使っています。AWSにサーバーを立てる前の環境のテストに使えます。あとは、Windowsバイナリがないようなプログラミング言語の実行環境を入れるとか。これは遊び程度ですが。MobaXtermなどを使えば、GUIのソフトウェア、例えばファイルサーバも起動します。
Linuxにはなんとなく憧れを持っています。最初使ったのは大学のこれですが(Unix)、使いづらかった思い出。当時としては仕方ないんでしょうが。
2020年7月4日 拙著についてほか
正誤表を出していますが、拙著に一箇所間違いを見つけました。非線型モデルだと資本Ktに上限sup Ktがあります。Kmaxとしておきます。線形化すると無限大になるので、見落としました。
オイラー方程式とは何か、という質問をされました。この質問は想定内なのですが、調べがつかないので拙著では言及できませんでした。おそらく、解析力学のラグランジアンに変分法を適用することで導出されるオイラー=ラグランジュ方程式からの連想で、効用関数から定義したラグランジアン/ベルマン方程式から導出される一階の条件を(消費の)オイラー方程式の呼ぶのだと想像しています。
離散時間の無限期間の最適化の最適化の解法は、ベルマン方程式を使うのが正統でしょう。ラグランジアンからは横断性条件が導出されないので(もしかしたら、ルジャンドル変換をしてハミルトニアンにすれば出る?)。ただ、ベルマン方程式は高難度なので後に回しています。
同じく、モデルの解法は、行列の固有値を使う方法が主流ですが、行列も案外ハードルが高いので後に回しています。もっといえば、Simsのgensysがスタンダードだと思いますが、ロジックは難解です。論文も、証明という形では書かれておらず、教科書等に書いてあることも間違いが多いです。
2020年6月14日 Mac OS
このところ、ZoomでiPad(書き込み用)との連携がいいという理由でMacをメインで使っています(MacBook Pro 2019 13インチ)。 正直、Google ChromeとOffice 365を使う限り、細かいところを除けばWindowsと変わらないです。TeXの日本語の文字コードがShift-JISかUTF-8かの違いくらいです。エディタで簡単に変換できますが、Macではmiにしました。プログラミングもRとMATLABだけで、最近全然コンパイルをしていないので。 Mac OSを使うのはIntel CPU移直後の初代MacBook(2006年)以来ですが、今後、CPUをARMにするのでは、といわれているらしいですね。あとはWindowsでLinuxが走るようなったようですが(WSL, WSL 2)、今のところCUIのみで、私には使い道は思いつきません。
2020年6月12日 8/4追記
確率過程論のリーディングリスト
- 入門確率過程
- 集合と位相空間
- Probability with Martingales
- 微分方程式入門
- Stochastic Differential Equations: An Introduction with Applications
- 邦訳:確率微分方程式
- 確率微分方程式
2020年4月29日
私が影響を受けた本の一つに『量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために』があります。この本の発売前ですが、著者の清水先生の授業を受けたこともあります。実は、自分の本のスタイルはこの本をまねています。この本の最後は、EPRパラドックスの実験から、電子のスピンの存在は古典論では説明できないことを示して終わります。
ただ、私がずっと気になっているのは、電子のスピンがなぜ存在するかです。前出の本では、電子のスピンを表すパウリ行列が天下りに導入されています。これを正しく理解するには、場の量子論を学ばなければならないようです。『場の量子論: 不変性と自由場を中心にして (量子力学選書)』に行きついて、私自身は途中まで勉強しましたが、あまり時間もさけないのでまだ上述の問の解答には至っていません。この本はAmazonで称賛されている通り、本当に丁寧に書かれていて名著です。
場の理論は難しいのですが、『量子場を学ぶための場の解析力学入門』という参考書があります。交換関係がどこから来るのかや、群論については『物理学におけるリー代数』を見るとよいです。素粒子の法則がリー代数のような複雑な理論に従うのは不思議ですし、それを発見できた物理学者に驚きます。
2020年4月10日
マクロ経済学の大家の先生の提言をみて思うことですが、マクロにも理論、実証だけでなく「行動経済学」が求められてますね。
2020年3月15日
社会科学のためのデータ分析入門(上)(下)を読みました。問題は解いていませんが。データ分析の授業(1年後期のプレ専門ゼミ)はちゃんと組み直そうと考えているところなので参考になります。上巻には統計の話が含まれず、下巻に初めて出てくるのは特徴的です。また、上巻で回帰分析(予測)より前に因果推論の話をするというのも同様です。要するに因果推論が一番やりたいことだからでしょうし、RCT(ランダム化比較試験)が理想的どおりデザインできるならば、統計の知識もほとんどいらないというのはそうでしょう。例が非常に豊富なのも非常によいです。
あえて難点をいえば、例はアメリカ政治が中心ですので、日本の経済学部の学生は興味を持ちづらいのではないかという懸念があります。また、因果推論ももう少し後ろのほうが学生には通じそうです。下巻の統計に関する記述は悪くいえばありきたりのもので、統計学が根本的になぜわかりづらいのかを踏まえたものになっていません。どうすれば学生に統計学がよく伝わるかは、まずは自分自身で考えなければいけないことですが。
2020年2月9日
サイトを少し更新しましたが、本を刊行準備中です。初校校正まで終わっているので、3月中に出ます。ゲラを見るのは久々ですが、神経をつかいます。プログラム類もGitHubに上げました(まだ未公開)。
2019年12月21日
少し前の記事ですが、日本は物価が安いというのがあります。90年代は「内外価格差」があり海外より日本の方が物価が高いとされていましたが、その後のデフレーション、賃金上昇率の低迷の時代を経て、物価の国際調査を見てもOECD平均並みになったようです。日本で買うと安いものとして、100円ショップ、ユニクロ、ディズニーランドチケットが挙げられますが、コンビニも24時間営業というサービスを考えれば格安ではないでしょうか。ビックマックインデックスからも分かりますが、ファストフード店も海外より安価です。理由は、そういう業種に従事している人の賃金が、国際比較の意味で安いということです。先の物価の国際調査では、Educationも割安とされています。
2019年12月10日
ブログというものをちゃんと続けられたことがないのですが、今回ページを用意したのは、一物理学者が観た哲学というのを目にして感想を書こうと思ったから。(素粒子)物理学者があれだけ”哲学者”に強く出てるのは、自分たちの理論が再現可能な実験に裏付けられているから。もちろん仮説にすぎない部分も多々あるのですが、それも高度な数学で支えられていて、それを物理学者のコミュニティで共有している。
哲学者が科学の先端にいた時代から、科学(者)と哲学(者)に分離して久しい現代では、今後は偉大な科学者は現れても偉大な哲学者が現れないのではないでしょうか。
2019年11月25日
休日出勤後、遅ればせながら、サイトの常時SSL化をしました。wikiに影響があるのかと心配しましたが、特に影響ないようです。FreeStyle Wikiのバージョンも更新。GitHubのアカウントも取得(GitHub Education登録も)したので、少しあるプログラム類もいずれ移動します。